建設業の許可と種類
建設業とは
建設業とは、元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業を言います。
請負とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約束する契約をいいます。(請負契約)
雇用契約、委任契約、売買契約、委託契約は該当しません。
許可を必要とする者
建設業を営もうとする者は、軽微な建設工事を除き、建設業の種類(29業種)ごとに、国土交通大臣又は都道府県知事の許可を受ける必要があります。
◆許可を受けなくてもできる建設工事(軽微な建設工事)
建築一式工事以外の建設工事 | 1件の請負代金が500万円未満の工事(消費税込み) |
建築一式工事で右のいずれかに該当するもの | ①1件の請負代金が1,500万円未満の工事(消費税込み) |
②請負代金の額にかかわらず、木造住宅で延べ面積150㎡未満の工事 (木造住宅とは、主要構造部が木造で、延べ面積の1/2以上を居住の用に供するもの) |
※工事の請負代金が分割されている場合は、合算して一つの工事として請負代金を考える。
※注文者が材料を提供する場合は、材料の金額を請負代金に加えて判断する。
※機械器具等も材料として考えて請負代金に加える。
許可の種類
・国土交通大臣許可:複数の都道府県に営業所がある場合
・知事許可:一つの都道府県のみに営業所がある場合
※営業所とは、請負契約の締結に係る実体的な行為(見積・入札・契約等)を行う事務所を言います。単なる登記上の本店に過ぎないもの、請求や入金等の事務作業のみを行う事務連絡所、工事現場事務所、作業所等は営業所には該当しません。
建設工事と建設業の種類
建設業は下表の29業種に分かれており、業種ごとに許可を受ける必要があります。
①土木工事業 | ②建築工事業 | ③大工工事業 | ④左官工事業 | ⑤とび・土工工事業 |
⑥石工事業 | ⑦屋根工事業 | ⑧電気工事業 | ⑨管工事業 | ⑩タイル・れんが・ブロック工事業 |
⑪鋼構造物工事業 | ⑫鉄筋工事業 | ⑬舗装工事業 | ⑭しゅんせつ工事業 | ⑮板金工事業 |
⑯ガラス工事業 | ⑰塗装工事業 | ⑱防水工事業 | ⑲内装仕上工事業 | ⑳機械器具設備工事業 |
㉑熱絶縁工事業 | ㉒電気通信工事業 | ㉓造園工事業 | ㉔さく井工事業 | ㉕建具工事業 |
㉖水道施設工事業 | ㉗消防施設工事業 | ㉘清掃施設工事業 | ㉙解体工事業 |
建設業の29業種の詳しい説明は、お役立ち情報のこちらの記事で確認してください。
営業所の要件
営業所とは、請負契約の締結に関する実体的な行為(見積り・入札・契約等)を行う場所であって、下記①~⑥までに示す要件を備えているものをいいます。
①外部から来客を迎え入れ、請負契約の見積り、入札、契約締結等の実体的業務を行っていること
②電話・机・各種事務台帳等を備え、契約締結ができるスペースを有し、他法人又は他の個人事業主の事務室等とは間仕切り等で明確に区分されていること
③常勤役員等(経営業務の管理責任者)又は建設業施行令第3条の使用人が常勤していること
④専任技術者が常勤していること
⑤営業用事務所としての使用権原を有していること(自己所有の建物、賃貸借契約等を結んでいること)
※住居専用契約は、原則として認められません
⑥看板、標識等で、外部から建設業の営業所であることがわかる表示があること
建設業の許可区分(一般建設業と特定建設業)
建設業の許可は、一般建設業と特定建設業とに区分されています。
同一の業種について、一般建設業と特定建設業の両方の許可は受けられません。(営業所が異なっていても受けられません)
業種が異なっていれば、一般建設業と特定建設業の両方の許可を受けることができます。
特定建設業に係る下請契約金額の制限
発注者(施主)から元請の立場で直接請負う1件の建設工事について、下請代金の額が4,500万円以上(税込)(建築一式工事は7,000万円以上(税込))となる下請契約を締結し施工しようとする場合は、特定建設業許可が必要となります。
一般建設業許可は特定建設業許可以外の建設業者が取得する許可のことです。
※複数の下請業者に出す場合の下請代金の額は、その合計額で判断します。
※注文者や元請業者が材料を提供する場合は、その額は下請代金には含まない。
※工事の全てを自社で施工する場合は、特定建設業許可は不要です。
※二次下請け以降に対する下請契約金額の制限はありません。
その他に専任技術者や財産的基礎等にも特定建設業についての制限があります。(詳しくは、下記の建設業許可の要件で記載)
許可の有効期間
建設業許可の有効期間は5年間です。
引き続き建設業を営もうとする場合には、期間が満了する日の2か月前から30日前までに更新手続きを取らなくてはなりません。怠った場合には、期間満了とともに建設業許可の効力を失います。
複数の業種の期限が異なる許可を有している場合には、更新手続きの際に許可日を揃えることができます。
更新と同時に業種追加する場合は、更新の申請期間中の更新申請で業種追加も可能となります。
建設業許可の要件
5つの要件
①適正な経営体制を有していること
②営業所ごとに専任技術者を置いていること
③不正または不誠実な行為を行うおそれがないこと
④財産的基礎または金銭的信用を有していること
⑤欠格要件に該当しないこと
1, 適正な経営体制を有していること
適正な経営体制とは、経営業務の管理責任者としての経験を有する者を置いていることと、適切な社会保険に加入していることの2つを意味します。
経営業務の管理責任者とは ((1)と(2)を満たす者)・・・個人で要件満たす場合
(1) 現在、申請会社の常勤役員、又は個人事業主である
・建設業務の責任者
・常勤の役員等(執行役員を含む、監査役を除く)、個人事業者
・営業所に常駐
(2)過去、建設業についての経営業務の管理責任者(役員等)の経験がある者
※過去の経験を証明する資料が必要
個人の過去の経験(①~③のいずれか)
①建設業について5年以上の経営業務の管理責任者(役員等)の経験ある
②取締役から建設業の権限の委譲を受けて経営業務の管理責任者に準ずる地位(取締役の一つ下、執行役員等)で5年以上の経営経験ある
③6年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位(執行役員の一つ下、執行役員制度なければ取締役の一つ下で建設業部門の本部長等として建設業の一切を管理していた)、経営業務の管理責任者を補佐した経験ある
組織で経営業務の管理責任者の要件満たす場合 (①と②のいずれかに該当)
①常勤役員等のうち1人が、建設業に関する2年以上の役員等の経営経験があること、かつ建設業に関して役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位(財務管理、労務管理、業務運営を担当)にいた期間を合わせて5年以上の経験有する者
②常勤役員等のうち1人が、建設業に関する2年以上の役員等の経営経験があること、かつ建設業以外の業種での役員等の経営経験の期間を合わせて5年以上を有する者
上記①、②のいずれかに加えて、当該常勤役員等を補佐する者として、財務管理、労務管理、業務運営の経験(申請会社で5年以上経験)を有する者を置く体制を備えること
適切な社会保険に加入していること
法令で加入義務のある社会保険に加入する必要があります。
・雇用保険・・・役員のみや、個人事業主のみの場合は適用除外となります。
・健康保険・・・健康保険組合に加入の場合は適用除外となります。
・厚生年金・・・法人であれば必ず加入義務があります。(個人の場合、常用労働者5人以上の場合に加入義務があります)
2, 営業所ごとに専任技術者を置いていること
専任技術者とは、建設工事を適正に履行するには建設工事についての専門的知識を有する必要あります。そのため、建設業許可を受ける各営業所ごとに一定の資格または経験を有する常勤の技術者を専任で配置して、営業所に常駐して技術的サポートや指導監督する役割を有する者をいいます。
※経営業務の管理責任者と兼務することは可能です。
専任技術者の要件
一般建設業許可の場合
次の①~③のいずれかに該当すること
①許可を受けようとする建設工事に関する高校指定学科を卒業して、5年以上の実務経験を有する者
許可を受けようとする建設工事に関する大学指定学科を卒業して、3年以上の実務経験を有する者
一級一次検定試験合格(技師補)の場合は、3年以上の実務経験を有する者
二級一次検定試験合格(技師補)の場合は、5年以上の実務経験を有する者
(※技師補の場合、指定建設業7業種と電気通信工事業は除かれます)
②許可を受けようとする建設工事に関する10年以上の実務経験を有する者
③許可を受けようとする建設工事に関する一定の国家資格等を有する者 (業種により異なる)
※実務経験期間は、常勤で勤務していることが必要
特定建設業許可の場合
次の①~③のいずれかに該当すること
①指定建設業(土木、建築、電気、管、舗装、鋼構造物、造園)については一級の国家資格が必要
②上記①指定建設業以外の業種の場合、一般建設業の要件と2年以上の指導監督的な実務経験(元請として4,500万円以上の工事で現場主任者、現場監督などの経験)が必要
③大臣認定
3, 不正または不誠実な行為を行うおそれがないこと
建設業許可を受けようとする者は、請負契約の締結、その履行に際して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでない者であることが必要です。法人の場合は、当該法人、その役員、政令で定める使用人が、個人の場合は、その者、政令で定める使用人が該当します。
4, 財産的基礎または金銭的信用を有していること
一般建設業の財産的基礎
次のいずれかに該当すること
①自己資本の額が500万円以上であること
(直近の決算の純資産の額が500万円以上である、決算を迎えていない会社の場合は、設立時資本金の額が500万円以上であること)
②500万円以上の資金を調達する能力を有すること
(申請日から1か月以内の預金残高証明書で500万円以上の残高が証明できること、同じ残高の日付で複数の金融機関の発行の証明書の合計でも可)
※発行日でなく、残高の日付を見る
③許可申請の直前5年間、許可を受けて継続して営業した実績があること
特定建設業の財産的基礎
次の全てに該当すること
①欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
②流動比率が75%以上であること
③資本金の額が2,000万円以上であること
(決算を迎えていない場合は、資本金の額4,000万円以上が必要)
④自己資本の額が4,000万円以上であること
5, 欠格要件に該当しないこと
以下に該当する場合には、建設業許可の取得すことはできません。
(1)許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事項に記載が欠けている場合
(2)申請者、役員、政令で定める使用人が次のいずれかにに該当する場合
①破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
②一般建設業の許可または特定建設業の許可を取り消され、その取り消しの日から5年を経過しない者
③一般建設業の許可または特定建設業の許可の取り消しの処分に係る聴聞通知を受け取った後、廃業の届出をした場合に届出から5年を経過しないもの
④聴聞通知を受け取った日から取消処分された日(取消処分をしないことの決定がされた日)までの間に廃業の届出をした場合、聴聞通知を受け取った日から遡って60日前までの間に当該廃業届出した法人の役員等若しくは政令使用人であった者(個人事業主の政令使用人を含む)で、廃業届出の日から5年を経過しないもの
⑤建設業法第28条第3項又は第5項の規定により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
⑥建設業法第29条の4の規定により営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
⑦禁固以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
⑧建設業法等に違反したこと又は刑法の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したことにより、刑罰の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
⑨暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
⑩心身の故障により建設業を適切に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの
⑪未成年の法定代理人が建設業法第8条各号のいずれかに該当するもの
⑫法人の役員等又は政令で定める使用人のうちに、建設業法第8条第1号から第4号まで又は第6号から第10号までのいずれかに該当する者のあるもの
⑬個人で政令で定める使用人のうちに、建設業法第8条第1号から第4号まで又は第6号から第10号までのいずれかに該当する者のあるもの
⑭暴力団員等がその事業活動を支配する者
必要書類
【経営業務の管理責任者の要件確認資料】
(役員経験した期間の常勤性証明)
・役員を経験した期間の履歴事項全部証明書
・個人事業主の場合は確定申告書
(建設業許可業者での役員経験期間の場合)
・役員を経験した期間の建設業許可証
・受付印ある建設業許可申請書、変更届、廃業届
(建設業許可のない業者での役員経験期間の場合)その会社が建設業を行っていた証明
・役員を経験した期間の請負契約書、工事注文書、請求書、入金確認(通帳)
【専任技術者の要件確認資料】
(1)実務経験で要件満たす場合
①実務経験期間の常勤性証明
・厚生年金の被保険者記録照会回答票
・健康保険証(会社名記載)
・個人事業主の場合は確定申告書
②実務経験の証明
・建設業許可業者での経験の場合は、取得する業種限定の建設業許可証明書、又は受付印ある建設業許可申請書、変更届、廃業届
・建設業許可のない業者での経験の場合は、取得する業種限定の請負契約書、工事注文書、請求書、入金確認(通帳)
(2)資格又は指定学科+実務経験で要件満たす場合
①資格の場合は、資格者証
②指定学科の場合は、卒業証明証と実務経験の証明は(1)と同じ
【申請会社での経営業務の管理責任者と専任技術者の常勤性証明資料】
・健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書
・健康保険・厚生年金被保険者資格取得確認及び報酬決定通知書
・健康保険証(会社名、有効期限が記載)
・住民税特別徴収義務者指定及び税額通知
・確定申告書(個人事業主の場合)
【財産的基礎の資料】
・申請日1月前の500万円以上の預金残高証明書
【営業書の確認資料】
・賃貸借契約書(賃貸の場合)
・建物の登記事項証明書、固定資産物件証明書又は固定資産評価証明書(自己所有の場合)
・営業所の写真(全景、事務所入り口、事務所内部)
【社会保険加入の確認資料】
①健康保険・厚生年金
(ア)健康保険(全国健康保険協会)加入の場合
・納入告知書納付書、領収書・保険納入告知額・領収済通知書
・社会保険料納入確認(申請)書(受付印あるもの)
(イ)組合管掌健康保険加入の場合
・健康保険は、健康保険組合発行の保険料領収証書
・厚生年金は、上記(ア)のいずれか
(ウ)国民健康保険加入の場合
・厚生年金は、上記(ア)のいずれか
②雇用保険(下記のいずれか)
・労働保険概算・確定保険料申告書及び領収済通知書
・労働保険料等納入通知書及び領収済通知書
【その他の資料】
・会社の定款(定款に変更がある場合は議事録も)
・履歴事項全部証明書
・事業税納税証明書
・登記されていないことの証明書
・身分証明書
・財務諸表
申請から許可取得までの流れ
①申請書類の作成が終わりましたら許可行政庁に申請します。知事許可の場合は都道府県庁へ、大臣許可の場合は地方整備局へ申請します。
申請先の行政庁によって、事前予約が必要な場合や、郵送が認められる場合、認められない場合など違いがあるので確認が必要です。
申請手数料は知事許可は9万円、大臣許可は15万円です。
申請に不備がなければ、副本が返還されて申請書が受理されます。
②申請書が受理されてから審査に1か月~4か月程度かかります。
知事許可は30日程度、大臣許可は90日~120日程度かかります。
審査終了後、申請者のもとに許可番号が記載された建設業許可通知書が郵送されます。
許可通知書は大切な書面なので紛失することがないよう保管には注意が必要です。