有価物か廃棄物か

廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡できないために不要となったものをいいます。廃棄物に該当するのか、有価物に該当するのかを判断するにあたっては、物の形状、排出の状況、通常の取り扱い形態、取引の価値、占有者の意思等を総合的に勘案して判断することになります。(総合判断説)

①物の形状:利用用途に要求される品質、かつ飛散流出などの生活環境の保全上の支障が発生するおそれがないこと
②排出の状況:排出の前後において適切な保管や品質の管理がなされていること
③通常の取扱い形態:製品として市場が形成されていること
④取引価値:占有者と取引の相手方と有償譲渡がなされ、客観的に見て当該取引に経済的合理性があること
⑤占有者の意思:他人に譲渡する意思が認められること

廃棄物となれば廃棄物処理法の適応対象となり、運搬、処理をするには許可が必要となります。(廃棄物処理の許可必要)
廃棄物とならなければ廃棄物処理法の対象とならず、運搬、処理することに許可が不要となります。 (廃棄物処理の許可不要)

有価物か廃棄物かを判断した判例として、おから事件があります。

【事件の概要】
ある飼料製造会社が豆腐製造業者から処理委託を受け、処理料金を徴収して「おから」を収集運搬し、工場で熱加工処理等をして再利用を行っていました。
飼料製造会社は廃棄物処理の許可を取得していないため、無許可営業として廃棄物処理法違反として起訴されてしまいます。
飼料製造会社は、「おから」は廃棄物ではないから自身が行っていた収集運搬、熱加工処理は廃棄物の処理に当たらないため、廃棄物処理法違反ではないと主張しました。

【判決】
裁判所は、本件において「おから」を産業廃棄物に該当するとして、廃棄物処理法違反の産業廃棄物処理の無許可営業の罪に当たると判断しました。

【判旨】
「不要物」とは、自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要になった物をいい、これに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び事業者の意思等を総合的に勘案して決するのが相当である。そして、原判決によれば、「おから」は、豆腐製造業者によって大量に排出されているが、非常に腐敗しやすく、本件当時、食用などとして有償で取り引きされて利用されるわずかな量を除き、大部分は、無償で牧畜業者等に引き渡され、あるいは、有料で廃棄物処理業者にその処理が委託されており、被告人は、豆腐製造業者から収集、運搬して処分していた本件「おから」について処理料金を徴収していたというのであるから、本件「おから」は「不要物」に当たり、「産業廃棄物」に該当するとした原判断は、正当である。